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2010

赤外線カメラで夜の水槽を覗いてみる(準備編)

市販のWEBカメラを赤外線撮影装置に改造する


夜の水槽をWEBカメラで覗いてみる

前々からペルクラの孵化の様子を観察しようと思っていましたが、孵化が暗闇の中で行われるためその様子を見ることは難しいので諦めていましたが、最近ライブストリーミングを始めたのを期に、昼間の水槽の様子だけではなく夜間の水槽の様子も観察できる赤外線撮影に挑戦することにしました.


夜間の水槽の様子を観察するには赤外線暗視カメラを使えば良いのですが、市販の防犯用の赤外線暗視カメラは安くても数万円はしてしまいます.アクアネタからは大部離れてしまいますが、今回は一般的に入手可能なWEBカメラの類を赤外線対応カメラに改造する方法を紹介します.


今回は第一弾として手元に余っていた AppleのiSight(Firewire接続の初期のWEBカメラ)を改造してみました.iSight自体マイナーな存在だったのであまり持っている人はいないでしょうけど、他のWEBカメラでも同じような方法で赤外線カメラに改造することはできるでしょう.本当は画質の良い手持ちの3板式のDVカメラを改造してみようかと思ったのですが、もったいなさすぎるので今回は手探り実験編ということで安物のWEBカメラでの実験にしました.


赤外線撮影を行うために必要な環境について


カメラや写真について詳しい方はご存じだと思いますが、赤外線撮影では赤外線の照明装置、赤外線領域に感度を持つ撮影装置が必要になります.以前は赤外線撮影用のフィルムが小西六(今のコニカ)やKodak から発売されていたのですが、流石にデジタル全盛の時代ではもう手に入りません.


・照明光源とフィルタ

赤外線の照明装置は日中の太陽光下では比較的豊富に赤外線が含まれているので良いのですが、室内や夜間撮影では赤外線を発する特殊なライトを用意する必要があります.動物の観察などでは動物たちに照明を当てると逃げられたり警戒して近づいて来ないので、可視光を含まない赤外線領域の光だけで撮影を行う必要があります.

 

一般的に良く用いられるのは、タングステンランプやストロボ装置に赤外線透過フィルター(IRフィルター)を付けて、可視光を遮断して赤外線だけを照射する方法です.ただしタングステンランプでは熱の問題があり、ストロボ撮影ではビデオ撮影には不向きです.最近では赤外線だけを発することが可能な赤外線LEDが安価に出まわるようになりましたので、ちょっとした撮影には赤外線LED照明装置が使われるようです.

 

今回は実験ということなので、秋月電子で売られていた赤外投光器キットを使って簡易照明装置を作ってみました.このキットに用いられている赤外LEDの中心波長は940nmですが、光束は半値幅が数度しかなく非常に狭い範囲しか照射できません.なるべく光束を広げるためわざとLEDの光軸をずらすすように基板に取り付けていますが、それでも照射範囲の狭さはどうにもなりません.できれば拡散板のようなものをLEDの前面に取り付けておきたいものです.


可視光線をカットして赤外線だけ通す赤外線フィルターとして、富士フイルムのIR86(10cm角の物で ヨドバシで1,932円でした)を用いました.


赤外線フィルターと赤外投光器キット
赤外線フィルターと赤外投光器キット
組み立てた赤外投光器キット
組み立てた赤外投光器キット




・撮影装置

以前は赤外線フィルムが主流でしたが、現在はデジタル以外選択肢が無い状態です.当然デジカメやWEBカメラのようなCCD撮像素子を用いた撮影システムを使うことになりますが、ここで困った問題に突き当たります.


実はCCD撮像素子自体は赤外線領域の光に十分対応できるだけの広範な分光感度を有しているのですが、市販の民生用デジタル画像機器では赤外線領域の光を排除するように作られています.これは赤外線領域の光がCCD撮像素子に入射してしまうと、人間の視感と大きくずれてしまうことやハレーションなどの余計な副作用が生じてしまうため、余分な赤外領域の光を赤外線カットフィルターでCCD撮像素子に入射する前にそぎ落としています.


特殊用途の画像機器などは別として、一般に売られているデジタル画像入力機器は全てこの赤外線カットフィルターが組み込まれているので、何らかの方法でこの赤外線カットフィルターを取り外さないとまともな赤外線撮影はできません.市販のデジタル画像入力機器を改造する場合はこの赤外線カットフィルターを簡単に取り外せるかどうかが、赤外線撮影装置として使用可能かどうかの最初の鍵となります.


市販のデジタル画像入力機器を用いる場合もう一つ厄介な問題があります.赤外線撮影を行う際には赤外線だけを透過させる赤外線フィルターを用いるのですが、通常の可視光線に較べて透過する光の量が極端に減少してしまい、ノイズだらけの非常に汚い画像になり易いことです.また、通常の可視光撮影で行われているような自動露出機能やオートフォーカス機能が上手く機能しないため、撮影が遙かに難しいという問題があります.


赤外線撮影を行う際にはどうしてもマニュアル露出、マニュアルフォーカスに対応可能な機材が必要になります.残念ながら市販のデジカメやWEBカメラは殆ど例外なく自動露出、オートフォーカス仕様になっていますが、30万画素クラスの安物はマニュアルフォーカスか焦点固定の物が多いようです.


これらの点を考慮すると、現状では最初から赤外線撮影用に作られている装置を購入するのが無難な選択と言えるでしょう.とは言うものの自作派アクアリストとしては挑戦しない訳にはいかないので、無理矢理WEBカメラ改造して赤外線カメラにしちゃいましょう.